東京外国語大・渡部由香理

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渡部 由香理(わたなべ ゆかり)とは、東京外国語大学4年のヤクの運び屋である。

東外大生「8万円で」1.5億円の覚醒剤を密輸(2012年9月)

覚醒剤1.8キロ(末端価格約1億5000万円)を密輸したとして、大阪地検2012年9月13日東京都武蔵野市の東京外国語大4年・渡部由香理(24)を覚醒剤取締法違反(営利目的密輸)などで起訴した。渡部は否認している。

渡部は8月23日ウガンダからカタール経由で関西空港に到着した際、スーツケースに覚醒剤を隠して密輸した。大阪税関職員が手荷物検査で、不自然な手触りのコーヒー豆5袋を発見、X線検査で中身が覚醒剤とわかり、通報を受けた大阪府警が逮捕した。

渡部は「インターネットで知り合った人から『荷物を持ち帰ってほしい』と頼まれたが、覚醒剤とは知らなかった。旅費に加え、アルバイト代として8万円をもらう約束だった」と供述している。

東京外大4年女子を覚醒剤「運び屋」にした「サンバ・コネクション」

友人から届いた突然のメールは、危険な海外旅行への招待状だった。アフリカ・ウガンダから覚醒剤約1.8キロ(末端価格1億4800万円相当)を密輸したとして2012年8月、東京外大の女子学生が覚せい剤取締法違反(密輸)容疑で大阪府警や大阪税関に逮捕された。

女子学生は、サンバサークルの仲間だった女から「ウガンダから荷物を持って帰るだけで、千ドルの報酬がもらえる」というメールでの誘いに乗り、覚醒剤の「運び屋」に変身。「中身が覚醒剤とは知らなかった。海外に行くから語学も必要で、それくらいの報酬はもらえると思った」と容疑を否認するが、捜査関係者は「そんなおいしい話があるはずがない」とあきれ顔だ。

不審な超短期滞在

「怪しい」

8月23日夕。関西国際空港の税関で、東京都武蔵野市の東京外大4年、渡部由香理(24)のスーツケースを調べていた検査官の目が光った。

X線検査をすると、不審な影が。渡部が提出した手荷物の申告書には、土産物のコーヒー豆6袋と記載されていたが、開封すると、5袋の中からポリ袋に入った白い粉が出てきた。鑑定の結果は覚醒剤。渡部は覚せい剤取締法違反容疑で緊急逮捕された。

検査官が渡部被告に目を付けたのには、いくつかの理由がある。1つ目は、渡航先がウガンダだったことだ。関空では5月にも、ウガンダから覚醒剤を密輸したとして、20代の女が摘発されていた。女は今回の事件と同様にコーヒー豆の袋を使用。中に覚醒剤を入れた20袋をスーツケースに隠し、密輸したとされる。このとき持ち込まれた覚醒剤は約7.9キロ(末端価格約6億3千万円相当)。単独で密輸された覚醒剤の押収量としては、関空の開港以来最多だった。

さらに検査官は、わずか2日という渡部の現地滞在期間にも注目した。渡部はこれまで、韓国やブラジルへの渡航歴はあったが、ウガンダへは今回が初めて。観光目的とされたが、8月19日に成田空港を出発し、23日には帰国していた。「時差も考えれば、ただ行って帰ってくるような感覚」(税関関係者)だったという。

若い女性の単独渡航、ウガンダでの超短期滞在、土産物のコーヒー豆…。さまざまな要素がそろう渡部被告が、税関をスルーできるはずもなかった。

多数のお誘いメール

「コーヒー豆は土産として、ウガンダのスーパーで買った。代金は向こうで会った黒人が払った。中に覚醒剤が入っているのは一切知りません」

逮捕後、府警などの調べにこう主張し、容疑を否認している渡部がウガンダに向かったきっかけは、1通のメールだった。「ウガンダに渡って荷物を持ち帰ってほしい」。渡部の携帯電話にこんなメールが届いたのは8月に入って間もなく。差出人は大学時代の友人で、東京都小平市の会社員、吉田冬華(23)だった。

吉田は都内の私大出身。大学時代、複数の大学の学生が集うサンバサークルに所属しており、渡部とはそこで知り合った。吉田は渡部に、ウガンダに行き、指示した人物から荷物を預かって持ち帰るだけで千ドル(日本円約8万円)の報酬を渡すと提示。自己名義のクレジットカードを使って、渡部の航空券などを手配していた。逮捕後の渡部の供述などから捜査線に浮上し、府警と税関は、渡部に密輸を指示したと判断し、9月11日に逮捕した。

調べに対し、ウガンダから荷物を持ち帰るよう依頼したことは認めたものの、渡部被告と同様に「渡部被告の持ち帰ったスーツケース内に、覚醒剤が入っていたのは知らなかった」と容疑を否認した。

忍び寄る甘い誘い

「そんなうまい話があるはずないだろ!」

捜査では、吉田が渡部のほかに、複数の知人に同様のメールを送信していたことが判明。メールを受け取った知人の中には、親などに相談して強く叱責された人もいたという。外国から中身もよく分からない荷物を持ち帰るだけで、高額な報酬。「危険な話と疑わないはずはない」と捜査関係者は断ずる。

府警などは今回の事件の背景に、大がかりな麻薬密売組織があるとみて捜査を継続。組織に捜査が及ばないようにするため、組織とは関係の薄い渡部被告を「運び屋」として使ったとの見方を強めている。税関関係者によると、航空機の手荷物に潜ませて持ち込む「運び屋」の手口が、近年の覚醒剤密輸入事件の中で際立つ。運び屋自身は、元々は覚醒剤と無関係なことが多いという。

ラブ・コネクションも

運び屋の主な動機は金だ。「借金を申し込んだらもうけ話として持ちかけられた」「仕事がないときに、知人から依頼された」などのケースが多いが、中には恋愛関係に陥らせた女性を運び屋に仕立てる「ラブ・コネクション」と呼ばれる手法もある。

平成22年、スーツケースに覚醒剤約3.9キロを隠し、関空に密輸したとして覚せい剤取締法違反容疑で逮捕された大阪市の70代の女は、求婚されていた30代のナイジェリア人に頼まれたとされる。 女は独身。男とはこの約5年前に日本で知り合い、やがて求婚され、逮捕前にも男に会うため、ブラジルやセネガルなどに渡航していたという。

逮捕後、「男とエジプトで合流し、旅行した。スーツケースを交換してくれと頼まれ、1人で帰国しただけで覚醒剤が入っているとは知らなかった」と否認したが、捜査関係者は「知らなかったでは済まされない」と指弾する。覚醒剤の密輸は重罪だ。海外では死刑や終身刑になる場合もある。今回、関空で摘発された事件も密輸量で考えると、「10年近い懲役刑になる可能性もある」(税関関係者)という。

覚醒剤捜査に詳しい関係者は「密輸した覚醒剤が出回ると、薬物乱用者が増加する。覚醒剤欲しさに強盗などを犯す人間もいる」と指摘した上で、こう警鐘を鳴らす。

「どれだけ悪質な犯罪かは量刑の重さでわかる。わずかなお金のために、甘い誘いに乗って人生を棒にふらないように」

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